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Google TPUとJAX入門:次世代AI開発の標準スタック

1/13/2026

AI(人工知能)の進化は、アルゴリズムだけでなく、それを支える計算基盤(ハードウェア)ソフトウェアスタックの進化に大きく依存しています。その中でも、Googleが開発したTPU(Tensor Processing Unit)と、近年のAI研究でデファクトスタンダードになりつつあるJAXの組み合わせは、圧倒的なスケーラビリティと柔軟性を兼ね備えています。

今回の記事では、2025年〜2026年にかけての最新動向を交えつつ、TPUとJAXのエコシステムについて解説します。

1. TPU:AI専用に設計されたハードウェア

TPUは、Google Cloud上で利用可能なAIワークロード特化型の集積回路(ASIC)です。

  • Trillium (TPU v6): 2024年に発表され、2025年に一般公開された第6世代モデル。先代のv5eと比較して4.7倍の演算性能を誇り、Gemini 2.0の学習にも採用されています。
  • Ironwood (TPU v7): 2025年に発表された最新世代。「推論の時代(Age of Inference)」を見据え、超大規模モデルの推論を低コスト・高効率で行うことに特化しています。

TPUは、大規模な行列演算を高速化する「Matrix Unit (MXU)」や、疎なデータを扱う「SparseCore」を搭載しており、汎用的なGPUよりも特定のAIモデルにおいて高い電力効率とスループットを実現します。

2. JAX:高性能数値計算のための新標準

JAXは、一見するとNumPyに似たAPIを持つPythonライブラリですが、その実体はXLA(Accelerated Linear Algebra)コンパイラをバックエンドに持つ強力な計算エンジンです。

JAXの核となる4つの変換機能:

  1. jit (Just-In-Time compilation): Python関数をコンパイルし、ハードウェア上で最適化。
  2. vmap (Vectorization mapping): 関数を自動でベクトル化し、バッチ処理を容易にする。
  3. grad (Automatic differentiation): 任意の関数から勾配を自動計算。
  4. pmap (Parallel mapping): 複数のTPU/GPUデバイスに計算を分散。

これらを組み合わせることで、「書きやすさはPython、速度はネイティブコード」という理想的な開発環境を実現しています。

3. JAX AI Stack:広がるエコシステム

JAXそのものは低レイヤーなライブラリですが、その上に「JAX AI Stack」と呼ばれる様々な用途に応じたライブラリ群が構築されています。

  • Flax: ニューラルネットワーク構築のためのライブラリ。最新のNNX APIにより、より直感的なモデル定義が可能になりました。
  • Optax: 様々な最適化アルゴリズム(Adam, SGDなど)を提供。
  • Orbax / Grain: 大規模なチェックポイント管理やデータロードを高速化。

4. なぜ今、TPU/JAXなのか?

最大の理由は、「スケーラビリティの高さ」です。JAXは設計段階からマルチデバイス、マルチホストでの動作を前提としています。数千台規模のTPUクラスタを、あたかも一台の巨大なコンピュータであるかのように(pjitなどの機能を用いて)扱うことができます。

もしあなたが、最新のLLM(大規模言語モデル)の学習や、高度な科学計算に興味があるなら、TPU/JAXスタックは間違いなく最強の選択肢の一つとなるでしょう。


参照: