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カナダ留学記 ― 2017年夏、はじめての海外で見たもの

9/27/2017

※ 2017〜2018年にはてなブログ(「英語クエスト」)に綴っていた記録を、2026年にまとめ直したものです。当時の日記を、各日のエピソードもできるだけそのまま残して再構成しました。

2017年の夏、英検1級を取ったばかりの理系大学生だった僕は、人生ではじめて海外へ出た。行き先はカナダ・バンクーバー。University of British Columbia(UBC)の3週間の短期研修プログラムだ。毎日つけていた日記をもとに、その21日間を振り返ってみる。

出発の日 ―「恵まれているからこそ」(8/27)

移動日。いろいろな人からアドバイスや激励をもらい、駅には家族も見送りに来てくれた。学生の身なので旅費も十分には出せず、半分は両親に出してもらった。本当に恵まれていると思う。そして、恵まれているからこそなおさら、この留学を有意義なものにしなければいけない――そんな決意を心に強く刻んで、飛行機に乗り込んだ。今後の人生の糧となる、実りある旅にしたい。そう思っていた。

留学が始まる(8/29〜9/1)

2日目。6:30起床、トーストとリンゴジュースの朝食。午前は授業オリエンテーションとクラス分けのスピーキングテスト、それからキャンパスツアー。午後は大学のクラス、夕方はスタバと売店。慣れない一日が、淡々と時間割で刻まれていく。

4日目(8/31)。午前のディスカッションがとても楽しかった。日本、イギリス、イラン、中国――いろいろな国のステレオタイプ的な特徴について意見を出し合う。午後はプレゼンの準備で、UBCの興味のある部門を調べて資料をまとめる(これは正直つまらなかった)。夜にはホームパーティがあり、20人くらいが集まって豪華なタコスをご馳走になった。その後、友人たちと夜の公園へ。雑談、ブランコ、バドミントン。中国出身のルームメイトSさんはバドミントンがうまい。

5日目(9/1)。午前は文化人類学博物館へ。クラスメイトと互いにガイドし合って回った。カナダの先住民は、あの大きなトーテムポールを通じて、後世に何を残そうとしたのか――その謎は僕には解けそうもない。午後はプレゼン、話題はコンピュータ・サイエンス。アドリブでやった。もっと流暢に話せるようになりたい。その後、大学近くの自然公園へ。カエデの森に広い海。最高の場所だった。

アウトプット中心の授業

着いて最初のスピーキングテストで、午前は上から2番目のレベルのクラスに入った(同じ大学からの参加者は僕一人)。授業はとにかくディベートとディスカッション中心で、アウトプットが多い。教師の教え方・指示の出し方が見事で、毎日が楽しく有意義だった。印象に残っている授業を、いくつか時系列で。

ある日のディベートのトピックは「ハイテクノロジーを使わずに英語を学ぶことは絶対的に可能か」。僕は "条件つきでyes"(ローテクだけでも可能だが、YouTubeやe-learningを使えばより効果的)の立場で、つい熱くなって反駁を続け、周りが少し引いていた。別の日は、2つの意味を持つ単語(cabin, shade, tank, trunk……)を学んだり、イディオム(blow a fuse, cutting edge, silver surfer……)を使ったロールプレイをしたり。「電子タトゥー」という言葉で、SNSに無防備に個人情報を載せる社会へ警鐘を鳴らすTEDプレゼンは、言い得て妙でとても面白かった。チョコレートの食べ比べを通じて localfood や organic、Ocean Wise といった認証の理念を学ぶ授業もあった。終盤には、CBC(カナダ版NHKのような放送局)の様々な役割をロールプレイする回もあり、僕は News Director が向いていると感じた。

週末と放課後の冒険

3週間で、ガイドブックに載るようなバンクーバーの名所はほとんど回れた。日記から、行った場所を順に。

  • バンデューセン植物園(9/2):1時間半ほどで回れた。名前や歴史は分からなかったが、匂いや見た目、雰囲気を十分に味わえた。夜はお寿司屋で、マンゴーロールやカリフォルニアロール。日本のお寿司とは少し違うが、これはこれで美味しい。
  • ダウンタウン(9/3):H&Mでパンツを買い、ルームメイトと食事。案内の "CHINA" を陶磁器の意味と分からず、なぜか陶磁器巡りをするはめに(でもこれはこれで楽しい)。ギャスタウンでスチームクロックを見て、チャイナタウンへ。中国のお店が多くて楽しめた反面、ドラッグ中毒と思われる人やホームレスも多く、治安の悪さを実感した。港のカナダプレイスは景色がよかった。帰りに有名なジェラート店に寄ったが、本当に欲しい味をうまく伝えられず、英語で注文する難しさを痛感した。
  • ヴィクトリア弾丸トリップ(9/4):バンクーバー南西の島へ日帰りで。一番印象に残ったのは、なんといってもブッチャートガーデン。広い。広すぎる。その広大な庭園にびっしりと花が並ぶ。日本庭園も、昼寝に最適な平原もある。天国があるとすれば、きっとこういう場所だと思った。「この先の人生で何度も訪れたい。次は大切な人と来たい」と日記に書いている。
  • キャピラノ吊り橋(9/5):カナダプレイスから無料シャトルで30分。まずは敷地内のカフェで15ドルのハンバーガー。名所の吊り橋は全長100m超で、歩くたびに大きく揺れる。もう少しスリルが欲しくて、手すりに掴まらずに渡ってみた。クリフウォークや森林浴も楽しめて、おすすめできると思った。
  • スタンリーパークとナイトマーケット(9/8):午後は友人たちと中華を食べてからスタンリーパークへ。あいにくの天気だったが、ハイキングとババ抜きを楽しんだ。その後リッチモンドのナイトマーケットで、韓国の餡掛け唐揚げ、肉の薄切り、台湾の薄焼き、マンゴーデザートを食べ歩いた。
  • バンクーバー水族館(9/9):水族館自体は至って普通だったが、ラッコが可愛かった。その後、ヴィクトリアで一緒だったメンバーとカラオケへ。

そして、最大の感動がウィスラー(9/10)。ルームメイトたちと向かい、道中で偶然出会った仲間も加わって登山することになった。チキンチーズバーガーで腹ごしらえし、ゴンドラとリフトを乗り継いだ先に広がっていたのは、ハイジが住むアルプスのような360度の大パノラマ。この景色を見ただけで、カナダに来てよかったと心から思った。ただしウィスラーは生半可な気持ちで来てはいけない。日本ならまず立ち入り禁止になるような断崖絶壁や、巨岩だらけのうねった道が延々と続く。一緒に来た子は、これほど険しいとは思っておらず本当に苦しそうだった。それでも、その道を越えた先には究極の絶景がある。写真もたくさん撮ったが、それ以上に、その場の空気・匂い・色・風・音を五感のすべてで感じた。帰りに食べたカルボナーラは、ウィスラー補正を抜きにしても人生で一番おいしくて、イタリアにも行ってみたくなった。

出会った仲間たち

振り返って、この研修の一番の財産は、間違いなく人との出会いだった。国籍を問わず、本当に素晴らしい人たちに出会えた。同世代なのに自分より遥かに人間的に高いステージにいる人たちがクラスメイトやハウスメイトで、一緒に話し、議論し、笑い、旅し、悩み、時にはぶつかり合えた。このことは一生忘れないと思う。

ウィスラーで一緒だった2人のことは、よく覚えている。一人は一人旅が趣味で海外経験も豊富なHくん。道に迷ったときも、冷静に状況を分析して手持ちの情報から的確に結論を出す。それでいて常に他人を気遣い、個人よりグループ全体の利益を優先するリーダータイプだった。最初に授業で話したときの印象とは、いい意味で全然違った。もう一人は中国出身のルームメイトのSさん。地図を読んで現在地を把握するのが抜群にうまく、グループが間違った方向に進んでいてもすぐに気づく。何でも事細かに調べてくれる、いわばグループの "頼れる名参謀"(resourceful general!)だった。おっとりして見えて、実は思慮深く注意力も高い人だった。

放課後のサッカーやバレー、夜の公園のブランコ、何気ない時間も全部きらきらしていた。

食と失敗 ― 胃袋を大きくしたい(9/14)

食の思い出も多い。グランヴィルアイランドで食べたアイスクリームは絶品だったし(「カナダはアイスが美味い」と一本まるごと記事にしている)、ジャパドッグも美味しかった。

一方で、困った癖もあった。間食をしすぎて、夜にホストマザーが用意してくれた夕食を食べきれず、注意されてしまったのだ。「自分の胃袋と相談できないのは悪い癖だ。直さなければ」――『胃袋を大きくしたい。』というタイトルで、反省文のような日記まで書いている。この日は朝にルームメイトとバスケをして、午前はCBCを見学(職員のガイドは話すスピードが速くて聞き取りが大変だった)、午後のクラスは自分たちのプレゼン本番、という濃い一日でもあった。

最終日 ―「犬、裸、青春」(9/15)

最終日。午前は学んだことの総復習をゲーム形式で発表し合い、プログラムの終了セレモニーへ。クラスメイトのスピーチが心に残った。ランチパーティのトルティーヤとサンドウィッチがめちゃくちゃ美味しくて、何より、知り合った仲間とたくさん話せたのがよかった。

午後は特に仲のよかったグループで、最後にもう一度キャンパスを巡った。新渡戸稲造記念館、ローズガーデン、そして海辺。風景がきれいだった。帰宅後はリブロースを食べ、Sさんと、飼っている犬の話で盛り上がった。帰国したら写真を見せたい、なんて言って。荷造りをしていたら、気づけば深夜2時を回っていた。

3週間を終えて(9/23・9/27)

帰国後、研修の総括と、大学に提出するレポートを書いた。一言でいえば、この3週間は「自分の一生の財産になる、最高の旅」だった。

研修前の英語力は、英検1級を渡航1ヶ月前に取得した程度。リーディング・ライティングは英字新聞を読んで200字で意見を書けるくらい、リスニングはネイティブスピードだと完全には聞き取れず、スピーキングは簡単な日常会話程度だった。最大の目的は「未知の環境に身を置いて環境適応力・問題解決能力を養う」こと、次いで英語力の向上、友達づくり、異文化に触れること。

英語力の面では、ネイティブスピードのリスニング、簡単な会話を自然にこなす力、自分の考えを短く論理的に話す力――この3つはある程度伸ばせた。一方、3週間という期間とアウトプット中心の内容からある程度予想していた通り、リーディングとライティングの伸びはそれほどでもなかった。それでも、最大の目的だった環境適応力・問題解決能力は確かに養えたと感じている。

生活面では、カナダは気候的に住みやすかった(平均気温が日本より3〜5℃低く、雨が少なく湿度も低い)。ホームステイ先は親切で、部屋は快適、食事も合った。シャワーは5分までと言われ最初は短く感じたが、すぐ慣れた。通学はバスと電車で1時間ほど、コンパスカード1枚でどちらにも乗れて便利だった。人が粋なのも印象的で、バスを降りるときの「サンキュー」、店員のフレンドリーさが心地よかった。微妙だった点を挙げるなら、トイレが少ない、ポイ捨てが日本より目立つ、湯船に浸かれない、食べ物の物価が高い、くらい。

改善点もはっきり見えた。ホストマザーとはもう少し会話の機会を持てたはずだし、方向音痴でグループを誤った方向に導くこともあった。意見を譲らずクラスメイトと衝突することもあったが、正直に意見をぶつけ合い、その後すぐ仲直りできるようになったのは、少し大人になれた証だと思う。あとはもう少し柔軟に、器を大きくしたい。

そして何より――人との出会いが、一番の財産だった。今読み返すと、何もかもが初めてで、何もかもが眩しい。この夏が、その後の「外の世界へ出ていきたい」という気持ちの原点になった。